中国国内のゴルフ事情が少しずつ変化しはじめている。少し前まで「汚職や不正の温床になる」として、共産党員のプレーを原則禁止し、ゴルフ場も次々と閉鎖していた。しかし近年では国内ツアーの盛り上がり、海外で活躍する選手の増加で、少しずつ状況が変わってきているようだ。


●欧米のツアーで活躍するトップ選手


欧州ツアーでも活躍する李昊桐(リー・ハオトン)
欧州ツアーでも活躍する李昊桐(リー・ハオトン)

 スポーツシーンの発展は「ニワトリが先か、タマゴが先か」という話に似ている。一流のトップ選手が出てきて競技ピラミッド全体のレベルが上がるか、ピラミッドの土台が広がることで抜きん出た実力の持ち主が現れるか。

 中国のゴルフシーンは恐らく後者だ。数年前からナショナルチームの強化に力を入れ、欧米からコーチを招聘して、実力の底上げに努めてきた。デビッド・レッドベターなど著名なコーチのアカデミーも国内に数か所あり、トップクラスのジュニアでなくても、欧米の最新メソッドを教わる環境がある。

 そういった層を厚くする取り組みの結果として、女子ではフォン・シャンシャンのメジャー制覇や、男子ではリー・ハオトン(李昊桐、22)の欧州ツアーでの活躍などが形として表れている。

 フォン・シャンシャンは12年の全米オープン優勝のほかにも、リオデジャネイロ五輪で3位に入り、国内の知名度は高い。リー・ハオトンは今年、オメガドバイデザートクラシックでローリー・マキロイを破って優勝し「自信になった」と言い、今後さらなる飛躍が期待できる。マスターズでも初日のアーメンコーナーで、すべてのホールでバーディを奪う離れ業をやってのけ、フォン・シャンシャン同様に国内での人気が高い。昨年の全英オープンで3位に入る経験もあり、今週開幕する全米オープンでも上位に顔を出すかもしれない。

 こうしたトップ選手の活躍が競技人口を増やし、その中から次世代の選手がまた生まれていきそうだ。


●整備される国内ツアー


 中国国内の男子ツアーはPGAツアーとタッグを組んで運営を行っている。年間のポイントを重ねれば、PGAツアーの下部ツアーに参戦できるなど、中国から世界へ羽ばたく登竜門として機能をしていきそうだ。

 すでに大手のスポンサーがついているが、今後マーケットの拡大を考えると、賞金額が大きくなり出場選手の技術レベルが上がって、ゆくゆくは日本ツアーを凌駕する域に達する可能性も大いに考えられる。


欧米のコーチに指導を受けるセキ・ユウティン(右)
欧米のコーチに指導を受けるセキ・ユウティン(右)

 一方、男子に対して女子の国内ツアーはまだまだこれからという状況だ。

 昨年、日本ツアーに参戦し、2016年に中国国内ツアーで賞金女王になった経験のあるセキ・ユウティンの父、石越東にツアーの内情を聞いた。

 「日本との実力の差はまだまだあると感じます。大きく異なるのがコースセッティングの難易度です。日本のようにしっかりと固められた高速グリーンや伸びたラフというのは、あまりありません。整備の技術やゴルフ場側の一般営業との兼ね合いがあるのかもしれません」

 ギャラリーやスポンサーも日本ツアーほどのにぎわいはないと言う。

 「賞金総額は平均して70万元(1150万円)くらい。そのためトップレベルの選手は地理的に近くて、賞金額も高い日本ツアーを目指します」

 中国の国内選手のラウンドをチェックしたことがあるが、スウィングのレベルは高い。ジュニアにまで欧米のメソッドが入っているためか、日本の若手選手とレベルは変わらない。しかし、実践でスコアを出すためのコースマネジメントや応用力のレベルが高くはなかった。逆に言えばこの部分がのびしろとして残されていると言えるだろう。

 聞けば中国ではジュニアの大会でも、3日間競技などが増加傾向だという。

海外の仕組みや方法を取り入れ、急成長する中国のゴルフ。松山英樹を追う次のアジア人は、意外と中国から出てくる可能性もあるかもしれない。


 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。欧米のゴルフ先進国にて米PGAツアー選手を指導する80人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を直接学び研究活動を行っている。書籍「ロジカル・パッティング」(実業之日本社)では欧米パッティングコーチの最新メソッドを紹介している。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)