シンクロナイズドスイミングの日本代表はデュエットに続き、チームでも04年アテネ以来3大会ぶりのメダルとなる銅を獲得した。日本代表の井村雅代ヘッドコーチ(HC、66)は04年に退き、中国代表HCを経て14年に復帰。今回で計17個目の五輪メダルに携わった名伯楽の言葉から指導哲学を浮き彫りにする。

 ◆自主性は否定し、スパルタ肯定 「あんまり長く生きてない子に自主性って。大人が道しるべにならないと。ほめて伸ばすというのは、ただの無責任。私の責任はメダルを取らせること。だからむちゃくちゃ強引に指導した。今回のメダルで責任は果たせた」。

 ◆限界を超える 「人間はひるむ。そこを無理やり引っ張る。選手はしんどいふりをする。しんどい、頑張っていることは、私が決める。これ以上やったら病気になる、倒れるとかは、プロだから分かる。人間なんて簡単に死なへん。無理をすれば、だんだんと無理ではなくなる。10回が普通なら200回はきつい。200回が普通になれば、それは当たり前になる」。

 ◆オフは準備 「オフは何をしてもいい。逆に言えば、その中には練習するという選択肢もある。人より遅れていて、休むことがストレスになる場合もある。とにかく翌日の練習で心も体も元気でいること。遊び疲れは論外」。

 ◆涙は厳禁 「今の子は簡単に涙を流す。“泣いていいのは親が死んだ時とメダルを取った時だけや”と。親が死んだ時は、心から出る涙。メダルを取れた時も、心からうれしい涙。それは許可するが、それ以外はあかん。何か助けを求めているような涙を流している子は、悲劇のヒロインになっている。スポーツの世界では何の解決にもならない」。

 ◆独自性の追求 「日本人は人と合わせられる。我慢できる。細かいこだわりがある。シンクロは日本人に適したスポーツ。脚の長さでは適してないが、だったら鍛え上げて長そうに見せたらいい。そういう脚を作ってきた」。

 指導者として日本と中国で計9回目の五輪。今回の選手たちは「いい子」で困ったという。「あの子らは本当にいい子でかわいい。でもいい子では大勝負がかからない。悪者になれとは言わないが、どこかで、何が何でもの強引さと強さを持たないと。豊かで平和な日本の象徴だが、危機です」。4年後の東京大会まで続投は確実。選手たちとの闘いは続く。【田口潤】