高校通算の本塁打記録を塗り替えた清宮幸太郎内野手が、ドラフト1位で日本ハムに入団した。彼は早実時代から、東京五輪への強い意欲を口にしている。侍ジャパンの稲葉監督に選んでもらえるよう、少しでも力になれればと思う。同時に、カテゴリーやキャリアに関係なく、すべての野球選手に五輪の舞台を目指して欲しいとも、強く願う。

 国際試合は、現役の選手が最大の目標として掲げるにふさわしい舞台だ。私は09年、13年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にコーチとして参加した。優勝と準決勝敗退という結果だったが、どちらの記憶も甲乙の付けられない宝物として残っている。

 09年の第2回大会は、侍ジャパンの監督だった原辰徳氏に「一緒に戦おう」と声をかけられた。事の大きさに即答できず「少し考えさせて下さい」と返事を保留したつもりだった。しかし翌日には、原監督から選手選考について意見を求められた。断る余地のないオファーは今では笑い話だが、世界一を目指して夢中で戦った濃密な日々は、国際試合でしか経験できない、かけがえのないものだった。携わらせてもらったことを非常に感謝している。

 日本の野球と国際試合では、ルールの細部や解釈が違う。相手は日本なら確実にボーク(反則投球)を取られるフォームで平気に投げ込んでくるし、ベンチから大声を出してサインを伝達してくるケースもある。特に投手はボールの対応に苦労し、当たったらホームランの強打者が居並ぶ打線を抑えなくてはいけない。移動のバスが急に故障して動かなくなったり、メンバー交換したはずのスタメンが入れ替わっていたり…思いも寄らないことが次々と起こる。

 その1つ1つが、いわゆる「世界基準」であり、肌で経験し、乗り越えることは自分の引き出しが増えることと直結している。ちょっとしたスキを突いて盗塁を決めたり、全力疾走でミスを誘ったり。投手のコントロール力や、打者の自己犠牲など、日本が誇る素晴らしさを痛感することも多く、すべてがその後の野球人生にプラスとなる。

 現実に目を向ければ、東京五輪の侍ジャパンは金メダルを十二分に狙える。現状のままなら出場は6カ国で、WBCに比べて少ない。夏場の開催となれば、メジャーリーガーが出場できる可能性も極めて低い。大歓声の中でセンターポールに日の丸を掲げ、その経験をチームに持ち帰って伝え、野球をさらに前に進める原動力となって欲しい。

(2018年2月14日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。